イマージョン教育は、バイリンガル教育方法の1つです。
イマージョン(immersion)とは、日本語にすると「浸す」という意味。
つまり、児童・生徒を外国語の環境の中に「浸す」教育方法のことになります。
イマージョン教育は、授業で「外国語を」学ぶのではなく、算数や社会などの教科を「外国語で」学ぶ、というのが基本的な教育法になります。
その結果、通常の外国語教育プログラムよりも外国語に触れる時間がはるかに多くなる、という特長がイマージョン教育には生じてきます。
カナダの大学による研究では、イマージョンでフランス語を幼稚園から小学校6年ぐらいまで勉強した英語を母語とする子どもたちについて、
「リスニング力において、フランス語のネイティブと有意な差がないくらいまでのレベルに到達した」
とする結果を発表しています。
目次;
1.「赤くて丸いアレ」→「りんご」→「apple」ではダメ?
1.「赤くて丸いアレ」→「りんご」→「apple」ではダメ?
イマージョン教育がどういったものなのか、簡単な例でご紹介します。
下記は、通常の外国語教育とイマージョン教育を比較したものです。
【通常の外国語教育】
⇒ りんご ⇒ apple
【イマージョン教育】
⇒ apple
図にある写真はりんごですが,通常の外国語教育では,「りんご = apple」という風に単語を教わります。
でも、イマージョン教育では「写真のアイテム = apple」というように、日本語を介さずに英単語を教えるのです。
また、りんごの写真から派生してred(赤色)やround(丸い)など色や形についても児童・生徒に指導をしていきます。
このような方式で、たとえば算数では足し算や引き算、社会であれば日本の歴史や地理などについて「外国語で」学習をしていくのです。
クラス内における教師の指示も、当然外国語(多くは英語)で行われますので、教師の指示語なども合わせて外国語で理解をして、反応をすることが出来るようになります。
2.日本でのイマージョン教育・導入例
日本の学校でも、イマージョン教育を採用しているところがあります。
中でも代表的かつ先陣を切ってイマージョン教育を取り入れたのは加藤学園暁秀(静岡県)とぐんま国際アカデミー(群馬県)の2校です。
1992年に日本で初めてイマージョン教育を導入しました。
算数や理科などの教科を、文部科学省の学習指導要領に沿ったカリキュラムで、なおかつ英語で、指導をしています。
同校の卒業生は系列の加藤学園暁秀中学校・高等学校のバイリンガルコースに進学でき、国際バカロレア資格の取得も可能になるため、海外の大学進学を目指しているご家庭に人気です。
※国際バカロレアとは・・・
世界共通の大学入試資格とそれにつながる教育プログラムのこと。
詳しくは文科省のホームページにも記述あり。
加藤学園暁秀をモデルに群馬県太田市が申請して認定された「太田市外国語教育特区構想」に基づいて設立された、小学校から高校まで12年の一貫教育を行っている学校です。
ぐんま国際アカデミーでは教科の70パーセントを第二言語(英語)で学び、小学校6年時には自分の考えを英語でディベートできることを目指しています。
ぐんま国際アカデミーによると、イマージョン教育による成果として
「高校1年生の段階でTOEIC平均スコアが603点(990点満点)」
になった、という結果が出ています。
日本の企業で、社員の昇進の条件としてTOEIC600点を課している会社も多いと思うのですが、こちらの学校では、高校1年生にしてもうその条件をクリアしていることになりますね!
3.まとめ
イマージョン教育はバイリンガルを育成する上で、非常に効果的な教育方法の1つではあることは間違いありません。
でも、国語・算数などの「義務教育」として教科を、英語で教えることのできる日本人あるいは外国人教師の確保や教師の質、最適なカリキュラムの作成など、まだまだ課題が多くあります。
今後、そういった課題が解決され、イマージョン教育が普及し「英語の得意な日本人」が増えていくことを期待したいですね。
【 参考文献 】
白井恭弘(2008)『外国語学習の科学』岩波新書
白井恭弘(2012)『英語教師のための第二言語習得論入門』大修館書店
白畑知彦・冨田祐一・村野井仁・若林茂則(2012)『改訂版 英語教育用語辞典』大修館書店
バトラー後藤裕子(2015)『英語学習は早いほど良いのか』岩波新書