日本では、当然のことのように学校で使われている教科書ですが、アメリカには、全米に共通する認定教科書がないのをご存知ですか?
教科書だけでなく、アメリカの公立学校ではカリキュラムや学校規定など学校に関わることは、州毎に法律が定められているため、全米で教育内容を統一することがありません。
しょっぱなからタイトルを否定するようですが、少なくはなってきてはいますが、アメリカでも、一応、教科書というものは存在します。
でも、営利目的で会社が教科書を制作するため、内容は様々。
教科書はほとんどの州では義務付けていないため、学校や先生の判断で授業内容に関係のあるものだけを印刷し、生徒に配ることがほとんどです。
先生方の間では、内容が古かったり、堅苦しかったりと学習効率があまりないという意見もあるのです。
ここでは、アメリカの小学校の現場で、先生方がどう工夫しながら英語の学習効果を上げようとしているのかについて、お話をさせて頂きます。
目次:
1.教科書は一つの勉強方法に過ぎない
昔から、小学校の授業といえば、教科書と黒板を使って、先生がその内容に沿って教える、というのが一般に抱くイメージだと思います。
でも、最近はメディアが豊富になったため、例えば、授業内容に合ったYouTubeのビデオを見せて子供たちの関心を引き、理解を深めるといった工夫を凝らした授業を行っているという先生もいます。
アメリカの小学校でよく使われるYouTubeのビデオは、歌や踊りが取り上げられたものが多いです。
これは、一緒に歌を歌って自分から英語の発音を練習し、一緒に踊ることによって単語を覚えていくことにつながるからです。
日本のNHKで放映されている『おかあさんといっしょ』と同じようなコンセプトですね。
また、コンピューターのアプリを使って実際に自分が参加しながら学んで行く方法もあります。
アプリは、クラス全体が使うと小さい子供たちを指導するのに時間がかかりすぎてしまうため、生徒が使うコンピューターはクラスで1−2台に限定します。
先生が授業を進めている間に、クラスの片隅で1−2人がコンピューターのアプリに従って個人のペースに合わせて勉強します。
初めは戸惑うかもしれませんが、2−3回こなしていくうちに、子どもたちはアプリに集中して学習することができています。
2.移民大国ならではの、英語の教え方
アメリカは移民の国です。
日本にはあまりないことですが、いろいろな背景の子どもたちがアメリカに住んでいるため、子どもたちの予備知識や文化背景を無視して、教科書に沿って授業をすることが難しいこともあります。
例えば、アフリカから移民して来た子供を考えてみましょう。
アフリカには雨季と乾季という季節はあっても、四季がありません。
秋の紅葉や落ち葉、冬の雪や枯れ葉の考えなどをクラスで教えるには、もともとの予備知識がないため、全く理解することができません。
そのため、こういった単語に対する自国の言語もありません。
この考えを説明するには、教科書を使って言葉で説明するより、実際に外に出て秋の紅葉や落ち葉の体験をしてみることが一番効果的です。
ただ、子どもたちに実体験をさせるのではなく、その後に「それを体験して、何を考え、どう感じたか?」を表現するために、子どもたちに絵を書かせます。
まだ、小さい子どもたちは英語の文章が書けないことが多く、その場合は絵の近くにleaf など自分の言葉で書き添えるように言います。
もし単語が書けなくても、そういう子供には先生がThis is a leaf.(これは、葉っぱだよ。)と言って、子供の英語の理解を深めてあげます。
実際に目で見て、体験することによって、普段は素通りしてしまう英単語も子どもたちの心にしっかりと残るのです。
3.生活に根付いた言葉から教えてあげよう
事実や知識を頭でいくら理解していても、実際に英語が使えないのでは、意味がありません。
特に英語は生きた言葉なので、実際に英語の知識を使って会話をしたり、メールや手紙で相手と意思交換をしたりと適応力が大切です。
教科書に頼りすぎてしまうと、この適応力がうまくこなせません。
なにげないことなのですが、意外にできない、という実例をあげてみましょう。
たいていの先生はMorning meeting(朝の会)で、
Today is November 1, Thursday. (今日は11月1日、木曜日です。)
などの日付を言います。
そして、ただこの事実だけを言うのではなく、先生の質問によって、子どもたちはいろいろな角度から日にちと曜日を理解することができるのです。
例えば、
Today is Thursday, but what day of the week is it tomorrow?(現在形)
(今日は木曜日だけど、明日は何曜日ですか)
Today is Thursday, but what day of the week was it yesterday?(過去形)
(今日は木曜日だけど、昨日は何曜日でしたか?)
このような質問に答えることによって、ただ曜日を丸暗記して憶えるのではなく、「明日や昨日」について理解し、そしてそれに対応できる力も養えます。
また、「明日や昨日」の応用力だけでなく、「現在形と過去形」についても考えなくてはならないため、文章が複雑になってきます。
こういったやり取りを普段の授業に何気なく取り入れることによって、子どもたちは「学習」を意識しないで実際に学んでいけるのですね。
4.まとめ
教科書に沿って鉛筆とノートを使えば「学んでいる」という勉強法は、現代のアメリカでは、すでに少なくなりつつある教育方法です。
もっとも、このような方法は「古い、廃れるべき」というものではなく、数ある教育アプローチのなかの、ある一つの手段に過ぎない、ということです。
英語学習においては、子どもたちは何を知っていて、どうやってそれを使うかが大切です。
いくら文法がしっかりできていて、たくさんの英単語を知っていても、実際に使えない、ということでは意味がありません。
アメリカの授業では、参加型、実践型の教育方法が多いです。
教科書を使い、教室の中の授業だけを勉強だと思わず、もしご両親が英語を話せるのであれば、普段からお子さんに「何気なく」英語で会話をすることが、英語の適応力と理解力につながるでしょう。