前回は「小学校の英語教科化を考える」というタイトルで、2020年から始まる英語の正式教科化についてお話をしました。

今回は、それでは海外の小学校ではどのような外国語教育が行われているのか、という点に着目して、イギリス・イタリア・フランス・タイ・マレーシア・オーストラリアでの教育事情についてお伝えいたします。

 

目次;

1.イギリスの小学校での外国語教育

2.イタリアの小学校での外国語教育

3.フランスの小学校での外国語教育

4.タイの小学校での外国語教育

5.マレーシアの小学校での外国語教育

6.オーストラリアの小学校での外国語教育

7.まとめ

 

1.イギリスの小学校での外国語教育

イギリスでは7歳から11歳までの子供たちに向けて外国語の授業が必修化となりました。

参考URL → Foreign languages to be compulsory from age seven

一番多く取り入れている外国語の授業は、フランス語になります。

次いでスペイン語やドイツ語になりますが、最近では中国語にも力を入れ始め、BBCの国営放送でも中国語の学習番組が放送され始めています。

参考URL → New BBC show offers Mandarin for pre-schoolers

イギリスの子供たちは、TVを見て外国語を学ぶ子供たちも多いのですね。

でも、英語は世界の公用語。その公用語として話すイギリスの子供たちにとっては、やはり英語以外の外国語学習を取り入れて話せるようになるには壁も厚いようです。

イギリスでは英語が母国語のため、移民が多い国ではありながらも英語を話せることは必須になります。英語の読み書きができないと生活をすることも難しいですが、逆にいうと、イギリスでは英語を話せれば生きていけます。

外国語を学ぶ必要性が特になくなれば、話すことがなかなか出来なくなる。これは、日本人が英語が不得意な理由にも共通するのかもしれませんね。

 

2.イタリアの小学校での外国語教育

イタリアの母国語は、イタリア語です。

ヨーロッパに位置するイタリアでは、小学校1年生から英語教育がはじまります。

英語の教科は必修科目となっているため、小学校1年生では週に1時間、2年生では週に2時間、3年生から5年生では週に3時間の英語の授業を実施しています。

もっとも、イタリアでは英語を話す教師の質があまり良くない、と言われていて、その点を改善すべきだという議論がよく出てきます。

イタリアにはもう一つ問題を抱えています。

イタリアは移民の多い国でもあり、その移民たちがイタリア語を話せない、ということです。

そのために外国語の英語よりもイタリア語の教育に力を入れている、という地域もあるようです。

このように、イタリアでも英語を話せない、あるいは苦手、という人は多いです。ただ、わたしがイタリアに滞在していたときには、教育に携わっている方や若い方は英語を話せる人が多かった、という印象です。

イタリア語と日本語で会話が成り立ってしまった、という不思議な経験もありました。

最終的には、言葉は「心で」話し合える、ということを実感しました。

 

3.フランスの小学校での外国語教育

フランスの母国語はフランス語です。

フランスでも、イタリア同様、小学校1年生から英語教育がはじまります。

しかり、やはりフランスでも英語講師の質はイマイチで、政府としては英語教育に力を入れているものの、英語を苦にして話さない、というフランス人は多いです。

プライドが高くて英語を話したくない、というわけではなく、単に苦手だという人も多いようです。

ちなみにフランスは移民の多い国でもありますが、植民地としてフランス語を話す教育を受けてきた移民が多いため、移民であっても、フランス語を話すには割とスムーズです。

以前出会ったフランス人のご夫妻は、辞書を片手に英語を一生懸命話そうとしてくださいました。

笑わないイメージのあるフランス人でしたが、実際に接してみて話をしてみたら、とても気さくな方が多かった印象を受けましたよ!

 

4.タイの小学校での外国語教育

タイの母国語は、タイ語です。

タイでも、やはり小学校1年生から英語教育がはじまります。さらに、一部の幼稚園では、英語のアルファベットを教えたり、英語学習プログラムを組んでいるところもあります。

タイでも、基本的にはタイ人の教師が英語指導を担当しますので、タイなまりの英語で話すことも多いのですが、ネイティブスピーカーの教師の導入も少しずつ進んできています。45分授業で筆記と文法中心の英語授業が週に3-4回あります。

ただし、タイでは英語を学んだからと言って、話せるようになるか?という点では、まだまだ課題のようです。この辺りの課題は、日本とも共通していますね。

また、タイでは近年、中学校で中国語や日本語の授業も選べるようになりました。

 

5.マレーシアの小学校での外国語教育

マレーシアの母国語はマレー語です。

もっとも、マレーシアは多国籍民族の国ですので、インド系や中国系、マレー系などの自国語を持つ人たちが集まっている国です。多くの人たちが、マレー語以外に話せる言語を持っています。

マレーシアでは小学校1年生から英語教育がはじまります。

ですが、さすがは多民族の国、小学校よりも前、幼稚園のころから英語のプログラムを組むように、という政府の方針も出来ています。

今まで挙げてきた国々に比べ、英語教育が徹底している国と言えるでしょう。

ただし、マレーシアでも英語を学んだからと言って、話せるようになるか?という点では、まだまだ課題もあるようです。

 

6.オーストラリアの小学校での外国語教育

最後に紹介するのは、また英語圏の国に戻ってオーストラリアの外国語教育事情です。

オーストラリアも、やはり移民が多い多国籍の国です。

そのため、外国語教育へは国を挙げて力を入れています。

小学校低学年から外国語を教え始めますが、フランス語、イタリア語、インドネシア語や日本語、中国語などその学校によって異なるという特徴があります。

バランスよく、読む・書く・聞く・話すの4技能を取り入れた授業を行っています。

オンライン学習やスカイプなどの多用をして、子供たちが興味を持って学習ができるような工夫が良くされている学習法を取り入れています。

もう一つ、オーストラリアの外国語教育で特徴的な点は、政府が制定する教科書がない、ということです。

それぞれに、自作の教科書を作成したり教師が独自に選んだ教科書を使って学ぶことができるので、わたしはとても素晴らしいことだと思います。

実は、わたしはオーストラリアで日本語を指導していた経験があります。

まず、日本語で作成した教科書を自作で作成し、独自のプログラムも作成します。

例えば50音を使ったかるたを作って、子供たちにゲーム感覚でひらがな・カタカナを導入したり、ピアノを使って日本語の歌を歌ったり、踊ったりすることを取り入れて、とにかく楽しく学習できるように工夫をしました。

ひらがなを黒板に書いて、自分の名前であいさつをすることは毎回行いました。

「わたしの名前は○○です」といったあいさつを生徒一人一人に行ってもらうのです。

子供の場合は、15分を過ぎると集中力が低下しやすいため、15分おきにプログラムを替えて教えていましたが、生徒たちの興味も持続し、効率もよかったと感じましたよ。

 

7.まとめ

日本だけでなく、外国語教育については諸外国でも大変な努力と苦労があるようですね。

どの国でもネイティブスピーカーの教師の育成というのが、今後の課題となっているように感じます。

今までご紹介した国のなかでは、オーストラリアでの外国語学習がひとつの見本となっているのではないでしょうか。効率よく、かしこまらずに自由な発想で、工夫がされているように感じました。

日本の英語教科化をする上でも、参考にしてほしいなあと思っています。

 

 

 
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