日本と同様に、外国語として英語に取り組んでいるアジアの英語教育の現状を知っておきましょう!
目次;
1.はじめに
日本では小中学校の義務教育課程の中で必ず英語教育が行われますが、英語を母語としていない外国の英語教育の事情は、意外と知られていません。
今回は、筆者の滞在地、東南アジアの国・カンボジアでの英語&英会話教育事情についてお伝えしたいと思います。
2.カンボジアの教育・歴史的背景について
まずカンボジアの英語教育を語る前に、触れなければならないカンボジアの歴史があります。
それは、1970年代の内戦によって、カンボジアの教育はほとんど破壊された、ということです。
当時政権を握っていたポル・ポトは、極端な共産主義を志向し、都市住民を地方に強制移住させ、農業に従事させるという政策を展開し、知識人をすべて敵とみなし、教育の基盤を担う先生たちを亡き者にしてしまいました。
それから40年ほど経過した現在、カンボジアの教育はまだまだ日本のように整ってはいません。
ですが、世界遺産アンコールワットを抱えるこの国の魅力は、たちまち世界中の観光客を惹きつけ、観光業を中心に急激な経済発展をとげ、町には非常に活気があります。
そして、観光業の発展に伴って、英語教育の重要性が浸透していくようになっていったのです。
カンボジアも日本と同様、小中学校が義務教育となっています。
都市部では教育の重要性を理解する親が増えてきており、将来を見据えてしっかり学校に通わせる傾向にありますが、地方農村部においてはまだまだ子どもを労働力とみる傾向が残っています。
就学年齢を超えてから、再び学校に入り直し教育を受けるといったケースが多いため就学率のデータはあいまいな部分が多く、不確実です。なので、ここではそれについての記述は避け、実際に英語教育を受けている人たちについて記述していきます。
公教育の場で、外国語教育が行われるのは中学生年代になってからです。
フランスの植民地だった影響もありフランス語か英語を選択する仕組みですが、やはり現在は英語を学ぶ場合がほとんどのようです。
観光業に従事する人にとっては特に重要なコミュニケーションツールとなる英語です。
では、その英語教育の成果はどうなっているのでしょうか。
3.カンボジアにおける英語教育とその成果
結論から言いますと、中学生年代で英語教育を受けて、ネイティブの外国人観光客と対等に英語を使用できるレベルのカンボジア人の割合は、肌感覚から言って決して高くはありません。
ですが、日常の一場面においての会話能力は、日本でしっかり英語教育を受けた子どもよりも圧倒的に高いです。
特に、観光客を相手にしたお土産売りや商売をやっている子どもたちを見ていると、そのことを強く感じます。
学校で習った英語を駆使し、値段を伝える際の数字はもちろんのこと、高い、安いと言った買い物の場面で使用される語彙、何かをお願いするときや意思を伝える言葉、道案内でよく使うフレーズなど、生活に必要な英語力=会話力は驚嘆に値します。
日本人ならしり込みするような場面でも、彼らには生活がかかっている場合もあり、それにより学校で習った英語がさらに研ぎ澄まされていきます。
実践による習得が、学校での英語教育を支えに機能しており、そういった意味では英語教育の成果は日本より高いと言えるでしょう。
使用することにより能力が上がることは当たり前と言えばそうですが、改めて子どもの潜在能力の高さを感じます。
そしてそういった体験を子どものころに多くした大人は、英語学習を続ける傾向にあり、仕事をしながら英語教室、英会話教室に通う人も大勢います。
いずれにしても、英語が将来の自分へのリターンを大きくしてくれるということを理解しているのです。
4.カンボジアのインターナショナルスクール
もうひとつ英語教育について触れなければいけないのが、インターナショナルスクールの存在です。
国の政治が安定した2000年代以降は、欧米をはじめとする諸外国から外国人の居留するようになり、ビジネスやNGO活動といった形で、カンボジア国内に多くの外国人が入ってきました。
家族とともにカンボジアで生活する場合に、子どもの教育について苦労することが多分にありましたが、インターナショナルスクールが設立されるようになり、そのような問題は徐々に解決されてきています。
インターナショナルスクールには、富裕層のカンボジア人の子どもも通うことがありますが、基本的には英語で授業が行われます。
日本人子女も通っていますが、当然ながら学校生活での言語が英語になりますから、ほぼネイティブレベルの英語能力を有します。そして家庭では日本語、もしくはカンボジア語といったように複数言語を操っています。
英語が一番強くなり、母語がやや弱くはなりますがコミュニケーションにおいて問題はないレベルですので、英語教育だけを行なった場合よりも、さらに高い成果が得られていると考えられます。
5.まとめ
英語能力を上げるには、現地で生活するのが一番とはよく言われますが、教育環境が整っているとは言い難い国の事例を見ると、その説得力がより増したのではないでしょうか。
英語に触れる機会が増えれば増えるほど能力が上がる、ということは国内にいながらにして、その能力を上げるにはそのような環境に触れ続ける必要があるということです。
そのためには、将来を見越した自己投資が必要となりますが、継続することで大きなリターンがあると言えるでしょう。
経済発展が日本よりは遅れているカンボジアの人たちがそのことをよく理解している、というのは大いに示唆に富んでいます。