海外赴任に帯同する家族では、子どもたちの語学学習をどう進めていくべきか、というのは大きな関心事になってきます。
「現地の言葉、または英語を学んでおけばOKでしょ?」
というのは安易すぎる考えで、子供の年齢や滞在予定年数によっては「日本語教育」に力を入れる必要もあります。
我が家の場合がまさにこれに当てはまりました。
私の子どもは8歳と10歳の小学生、アメリカ生まれ・アメリカ育ちです。いずれ日本に戻ることも考え、現地アメリカでは「日本語学習」について色々と工夫をしながら取り入れました。
今日は、我が家の「日本語(子供にとっては第二言語)」学習についてのエピソードをご紹介します。
日本で生活をしているご家庭の保護者様には、文章中の「日本語」を「英語」に置き換えて頂くと、第二言語(英語)習得のご参考にして頂けるのではないかと思います。どうぞ最後までご一読ください。
もくじ
小学生の帰国子女が第二言語の日本語を学んでいくには
まず前半は、アメリカ生まれの子どもたちが、彼らにとっては第二言語となる日本語を習得するために家族で行ってきたことをピックアップしていきます。
帰国子女だからこそ、英語も日本語も、しっかり学ぶ!
ほとんどの読者の方は「日本語の学習」って言われても・・・・日本人だし、という感想を抱くのではないかと思います。
でも、帰国子女と呼ばれる子供たちのなかには、ご家庭で非常に苦労をして、日本語を学習・保持しているケースも多いのです。
そして、海外に住んでいる間の日本語キープ、もしくは学習するコツを知ることで、今度は、帰国後の英語力の保持のための学習方法もコツをつかみやすくなります。
そのためにも、海外では現地の言葉を学ぶだけでなく、意識的に日本語能力を保持する環境を作ってあげることが重要だと思います。
小学生に合った語学習得方法、とにかく話す機会を多く作る!
続いても「日本語教育」についてのお話です。
海外に滞在しつつ子供が日本語をしっかり覚えていられるように、親御さんとしては、まずは近くに日本人学校や日本語補習校、もしくは日系の塾があるかどうかを探してみますよね。
このようなスクールが赴任先の近くにあれば、そこに通うのが最善な方法になります。
同じぐらいの学齢の子供たちと日本語で会話をする機会があることは、日本語を保持する上では、とても重要だからです。
ただ、近くにこうした学校がない場合もあります。その場合には、家での学習が、日本語を使う全てになります。
周りは全て英語の環境ですから、せめて家庭内では「家族間の会話は日本語」と、しっかりルールを決めています。
兄弟同士では、どうしても英語で話すことが多くなってしまいますが、親は、そのまま日本語で話し続けたり、ときには英語と日本語両方の単語を訳したりして、なるべく両方の言語を使用する機会を作ります。
また、日本にいるおじいちゃんやおばあちゃんとスカイプなどで会話をする機会を、定期的に作るようにもしています。
会話については、とにかく「使う機会」を増やすように努力することが一番だと思います。
読み書きは、楽しめる方法を見つけないとツライ。
会話は「機会」を多く作ればなんとかなりますが、ちょっと大変なのが漢字などの読み書きの学習です。
我が家では、「石井式国語教育研究会」と呼ばれる漢字混じりの絵本の読み聞かせを1歳半から行いました。
アメリカでは全く使われない「漢字」を、なるべく早くから親しませ覚えさせていくのは、親子共にかなり努力のいることでした。
大変な思いをしても漢字の習得に特に意識して努力をしたのには、理由があります。
現地の日本語補習校などに通った場合、8歳~10歳で日本語の漢字が苦手になり、学校をドロップアウトすることになったり、日本語を全く読まなくなってしまう子供たちが多いのです。
そのため、漢字5分間ドリルや日本の童謡やアニメの主題歌、ことわざや俳句などを書かせる、などの学習を、週に2~3回は親も一緒に関わりながら、親子でこうした学習に取り組んでいきました。
子供たちだけでは、どうしても自主的には漢字の勉強をしてくれません。なるべく本人が興味ある内容で書き取りをしたり、書かせるだけでなく、YouTubeなどで日本語を聞かせて一緒に歌ったり読んだりなど、なるべく楽しく学習できるような工夫をしました。
また、日本語の学習マンガや〇〇のひみつシリーズ、市販のベストセラーの教育関連本を親が読んであげたりもしました。
このように「書く・読む」については、親子共にかなり苦労をしましたが、とにかく細く長く継続することが大切です。
何年かすると、子供も自分から日本の本を読んでくれるようになってくれましたよ。
小学生の帰国子女が帰国後に英語を保持させるためには
ここからは、日本に帰国してからの話です。
今までは一生懸命「日本語学習」に取り組んできたのですが、日本に帰国すると今度は「英語力」を保持するために働きかけをしなければなりません。
もっとも、この段階では今までの「第二言語の学習」の経験が生きてきます。何をすべきか、どうすると継続できるのか、といったコツは学んでいますので、あとは実行あるのみです!
英語の「聞く」と「読む」は、さりげなく日常生活に取り入れて
帰国子女が日本で英語力を実際に保持するためには、英語の4つの技能(聞く、書く、読む、話す)をまんべんなく学習する必要があります。
まずは「聞く」についてです。聞くについては、現在、多くの無料学習ツールがありますのでそちらを活用することができます。
アマゾンKindleの英語版を購入して子供に聞かせたり、インターネットも使えますね。
以下に、年齢別の人気おすすめサイトをご紹介します。
サイト名 | 対象年齢 |
---|---|
Starfall |
3歳ぐらいから始められます |
BrainPOP Jr. | 幼児~小学校低学年 |
BrainPOP | 小学1年~6年 |
TED-Ed | 小学校高学年生以上 |
上記は、アメリカのネイティブの子供達も使用している学習ツールで、英語でアカデミックな内容を学ぶことができます。また、英語での字幕が出るので、スペリング学習にも役立ちます。
上記は、アメリカのネイティブの子供達も使用している学習ツールで、英語でアカデミックな内容を学ぶことができます。
また、英語での字幕が出るので、スペリング学習にも役立ちます。
次に「読む」については、英語4技能(聞く・読む・書く・話す)のなかでは、一番気楽に簡単に学ぶことができるものです。
ちょっとしてスキマ時間でも、英語を読む機会は、気軽に作ることができるからです。
では、どのくらい読めば良いのでしょうか?日本語と英語の読む量の比率は?
これは、日本語の本を読んだら同じ時間だけ英語も読む、と言う感覚がベストだと思います。
もちろん、毎日2か国語で同じ分量だけリーディングをしなければ、ということではなく、もっと大きな期間、たとえば年間単位で考えればOKです。
このストーリーは日本語で、このエッセイは英語で読む、という感じで良いと思います。
英語の「書く」と「話す」は、目標や頻度を定めて
「書く」については、英語で日記をつけたり、興味のある英語版の詩や、絵本の文章を写すだけでも十分練習になりますので、とにかく書く、ということを意識すると良いと思います。小学生の帰国子女の場合、目安は半ページを週4回位です。
あるいは、アメリカのオンラインスクール(コンピューターを使用しての通信教育)に通ってしまう、という方法もあります。
これだと、日本の学校に通いながら、アメリカの学校にも通っていることになり、単位を取得できるところもあります。
これは、お子さんが中3以上の場合に限られてしまいますが、アメリカの高校生向けオンラインスクールに通った場合、取得した単位は日本の高校のオンラインスクール、例えば、東京インターハイスクールにもし移行(トランスファー)できた場合、日本とアメリカ両方の高校卒業資格を取得することも可能なんですよ!
次に、4技能の最後「話す」についてです。
実は、この「話す」についてが、一番キープをさせるのが難しいかもしれません。なぜなら、英会話を話すには、その、話す相手がいないと、成り立たないからです。
インターナショナルスクールにいくか、インターネット上の友達と話すか。
もしくは、英会話学校に行く、という選択肢も一般的です。
その中でも私のおすすめは「オンライン英会話スクール」です。実際、自宅でも受講できるオンライン英会話を利用している帰国子女はたくさんいます。
ただ、小学生のお子さんの場合にはシャイだったり、あるいはアクティブ過ぎてPCの前には座っていられないというお子さんもいるかもしれません。
もし、そういう状況でオンライン英会話はお子さんには合わない、と言う場合には、本などを声に出して音読する、という方法でも一定の効果がありますのでお試しになってみてください。
帰国後の選択、インター・公立小・私立小のどこにする?
帰国後のお子さんが小学生だったの場合、主な行き先は3つあり、インターナショナルスクール、私立小、公立小のいずれかに属することになります。
知っておいていただきたいこととして、小学生の場合中学校に比べて、英語を保持する環境の選択肢が圧倒的に狭いです。
(参考:「帰国子女のための学校便覧」)
小学校の段階では、英語に特化した学校の数が少ないためです。小学生の帰国子女さんは、中学生よりも、より意識を高く持って英語力の保持に取り組む必要があると言えるでしょう。
(もっとも、中学生は、今度は逆に日本語での学習で苦労する可能性が高くなるのですが。)
また、中学受験を考えている場合、小学校の3年生で帰国するとほとんどの学校では帰国子女枠が使えなくなってしまうことも知っておいてください。
多くの私立中学校では、帰国子女の受験資格を帰国後1~3年以内に絞っています。
もしも近くにインターナショナルスクールがあり、予算も許すのであれば、インターナショナルスクールは、グローバルな環境と相まって英語と英会話を学び続けるには最適な場所となります。
ただしインターに行く場合には、場所が限られる、学費が高額、という以外にも、日本語を学ぶ機会、特に読み書きが弱くなるということが難点になってきます。
また、インターナショナルスクールは、基本的には海外から駐在で来る外国人のための学校ですので、たとえばサイエンス教育などの特色ある私立校の方が、特定の分野での教育に優れているケースもあります。
興味深いのは、公立小学校や公立中学校でも、帰国子女や外国人児童に力を入れて取り組んでいる学校があることです。
前述の学校便覧によると、世田谷区や港区のいくつかの学校では「帰国・外国人児童の支援校」として、国際学級があり、日本語の補習授業を実施しているそうです。
こうした学校には帰国子女も多く集まるため、情報を収集して帰国子女が多い公立の学校を選んで、転入させる、という選択肢も検討の余地がありますね。
まとめ
帰国子女、というと「何にもしないで2か国語をペラペラになれていいな」などという憧れを抱いてしまう方もいるかもしれませんが、やはり2つの言語を習得するためには、本人も家庭も、すごく努力をしています。
日本語習得にしろ、英語の習得にしろ、語学を習得するためには「細く長く」そして「継続」というのが、キーワードになるのではないかと思います。
帰国子女が英語力を保持するためには、長いスパンでの環境づくりと、家庭での親と子供が一緒になって行う取り組みが欠かせません。
親の負担になりすぎないように、アウトソース(外注)できるところは可能な限りプロに任せて、あとは、子供が楽しく学習を続けられるように気配りを怠らないことが、親御さんにできることではないでしょうか。