英語学習の新しい手法として、CLIL(クリル)という手法が今注目されているのをご存知でしょうか?
英語教育に興味のある方は、ぜひご一読ください!
1.はじめに
母語の基礎が固まった5歳以降で初めて外国語を効果的に学習していくときには、CLILという手法を使って学ぶと良い、というお話をしたいと思います。
CLILの意味については後述するとして、英語そのもの「を」言語学習として学ぶのではなく、英語「で」何かしらの内容を学ぶ。
この、クロスカリキュラムの学習形態を実行することで、実践的な会話の中で使える英語学習を、より効率よく進めることが可能になります。
2.CLIL〔クリル〕とは
CLIL(クリル)とは、Content and Language Integrated Learning の略で、『内容言語統合学習』と訳されることもあります。
ヨーロッパでは、第二言語を学ぶときに広く取り入れられているメジャーな手法です。
同じような教育方法に、日本でも近年良く聞く「イマージョン教育」がありますが、CLILとの違いは、CLILの方が教育効果を引き出すための具体的な教育技法が体系化されている、イマージョン教育はどちらかというとアメリカやカナダでメジャーな教育法である、という点でしょうか。
CLILの最大のメリットは、一人一人の子どもの、得意な分野や興味・関心の強い分野と、言語学習とを同時にカバーしながら学習をすることで、英語での長期記憶を蓄えていく回路を作ることができてくるという点です。
ハーバード大学のハワード・ガードナー博士が提唱したMI理論〔=Multiple Intelligences, 『多重知能理論』〕によると、人間の興味関心はおよそ以下の八つの知能領域に分類されるそうです。
1) 言語的知能
2) 論理数学的知能
3) 空間的知能
4) 身体運動的知能
5) 音楽的知能
6) 対人的知能
7) 内省的知能
8) 博物的知能
外国語としての 1) 言語学習 のみに焦点をあてた英語学習より、CLILの手法で学ぶことで、より多彩な分野にアプローチして学習することができますね。
3.CLILと相性の良い教科とおすすめ教材<サイエンス編>
CLILは一つの手法ですので、もちろん全ての教科に対応しますが、中でも、理科・算数・地理・アートなどはとくに相性が良い分野です。
以下に、このCLILの考え方に基づいて作成された教材、もしくは、第二言語で何かを学ぼうとするときに活用できる教材を、サイエンス分野のワークブック形式のものから厳選してご紹介します。
Read and Understand Science Grade 1-2
アメリカの5~7歳くらいのお子さん向けですが、非常に簡潔な文章で書かれたサイエンスがテーマのお話を読み、キーワード・キーコンセプトを学んでいくと同時に、フォニックスまで学べるという多機能なワークブックです。
簡単な実験を楽しむこともできます。
後ろの方に進めていくと、少し読む分量が入ってきますが、主に、絵を描く事(イメージ)と言葉をしっかり結びつけながら学習するスタイルですので、2年くらいかけて繰り返し学ぶことで、しっかりした基礎力がつくでしょう。
Cut & Paste Science Grade 1~3
アメリカのコアカリキュラム※に沿った教材で、なおかつ第二言語として英語を学んでいる子どもたちを意識して先生たちが作成しているため、大変わかりやすく、取り組みやすい教材です。
豊富な絵や図、そしてキーワードが書かれたワードカードを切りはりしながら内容理解につなげていきます。
各テーマごとに短いまとめのページもあって、一つの短い文章の中で、単語の説明ができるように練習することができます。
※アメリカには、コモンコアと呼ばれる標準的な教育要領があり、コアカリキュラムと呼びます。
Discover & Learn: Science – Study & Activity Book, Year 1 / Year 2
こちらは、イギリスの5~7歳向けのカリキュラムがベースになっています。
絵を描いたり、短い文章のなかでキーワードの穴埋め形式の問題を通して、理科の知識と英語を同時に学べるようになっていきます。
薄くて英文を実際に書くのは少なめですが、キーワードとコンテンツはしっかりマスターできる、優れた教材です。
Cambridge Primary Science Stage 1 Learner’s Book
ケンブリッジの、インターナショナルカリキュラムのために開発された教材で、インターナショナルスクール等で用いられている教材です。
第二言語として英語で学んでいる子どもたちを意識して作られているので、すでに英検5級合格程度の力があれば、Science 1にはすぐに取りかかれるでしょう。
楽しいカラーの挿し絵を参考にしながら、短文レベルの質問文に一つずつ答えていけば、簡単なアウトプットの力まで無理なく伸ばしていくことができる、良い教材です。
4.おわりに
本日、CLILという手法と、それに基づく教科学習におすすめのサイエンス系教材をご紹介してまいりましたが、いかがでしたか?
次回は、算数系の教材をご紹介していきます。お楽しみに!
[出典・参考]
ハワード・ガードナー著/松村暢隆訳 『MI――個性を生かす多重知能の理論 』
CLILとは http://primary.cliljapan.org/what-is-clil/