日本でも、昨今、子どもをバイリンガルに育てるためにいろいろな教育法やスクールがあります。
では、海外では、どのようにバイリンガル教育を行っているのでしょうか?
英語圏と非英語圏によっても違いはあるものなのか・・・。
ここでは、海外に在住している日本人家族が体験した、海外の学校事情および子育て事情をご紹介します。
目次;
1.どんな言語であっても重視すべき4つの技能のこと
ここではまず、英語という言語に絞ってみましょう。
ネイティブのアメリカ人の子供は英語はペラペラに話せるかもしれませんが、教科書やノートを使用しての「読む・書く」という動作においては個人差があります。
ネイティブのアメリカ人家庭では、「話す・聞く」は日常行われる行為ですが、「読む・書く」は普段の生活で意識的に行わないとしなくても済んでしまう能力とも言えます。学力の差も、この「読む・書く」で付くとも言えるでしょう。
これらの4つの能力を上げることは、言語を取得することにおいて、英語だけに限らず日本語も含めどんな言語でも外すことのできない重要な能力です。
つまり、バイリンガルである前に、どんな言語を学ぶ際にもこの4つの言語能力、「読む」「書く」「話す」「聞く」はおろそかにするべきではない、ということに繋がっていきます。
4技能を重視する動きは、日本の英語教育でも盛んになってきていて、おなじみ「英検」でもスピーキングテストが、英検4級や英検5級といった入門級にも新たに導入されました。
→ 詳しくは「英検4級と5級・スピーキングテストって何?」の記事もご覧ください!
2.アメリカでの読み書き指導はどんな感じ?
アメリカのデラウェア州にある公立のオデッセイチャータースクールでは、授業中でもいくつかのクラスの廊下に机が2つ並べてあり、ボランティアのお母さんと生徒一人が一緒に勉強しています。
生徒が授業についていけないため、ボランティアの方が生徒に一対一で、読んだり書いたりするのを手伝っているのです。読み書きで学力の差がついてしまわないように、サポートをしているのですね。
また、アメリカでも「読み聞かせ」を重視しています。読み聞かせを通じて語彙が増えて想像力が高まり、結果的に言語能力が上がる。すなわち、読み聞かせを通して言語を学ぼう、という考えなのです。
アメリカのデラウェア州にあるクリスチャーナ病院では子供が生まれた時に一冊の絵本をメモとともに手渡されます。
そのメモには、「毎日絵本を生まれたばかりの赤ちゃんに読んであげましょう」と書かれてあります。
手渡されたお母さんにとっては、未だオムツも替えたこともない赤ちゃんに、早速絵本を読んであげましょう、と病院から勧められるわけですね。
3.英語を早い時期に教えると日本語がおろそかになる?
日本語もままならないのに、英語を幼児や子供に教えて混乱しないのかしら?もしくは、母語の発達に悪影響を与えないのかしら、という心配を持たれる方もいます。
では、日本以外の非英語圏でのバイリンガル教育はどうなっているのでしょうか。香港での例を見てみましょう。
香港にあるイギリス系ノードアングリア・インターナショナルスクール(小学校)では、通常の授業は英語ですが、5歳児さんから、すでに第2外国語 北京語(=中国語)があって、9歳からは北京語週5回か、北京語週3回とスペイン語週2回のどちらかを選択することができるようになり、毎日複数の言語を学びます。
香港人の家庭では、普段は広東語を話すのですが、子どもが小さいうちから家庭教師をつけて北京語を学んでいるというケースも多く、テレビでは広東語でニュースキャスターが話していても北京語での字幕が付いていたり、駅の構内でも、広東語・北京語・英語と3ヶ国語で放送されます。
もはや、目指すのはバイリンガルではなく、トライリンガルというのが香港の教育事情です。
香港の子供達は、このようなトライリンガルの環境において、混乱をしているのでしょうか?もしくは、母国語がおろそかになってしまっているのでしょうか?
1997年に中国に返還される前までの香港は、イギリスの統括下にあったため、学校では英語が教えられていました。
そのときに生徒だった子供達は今、社会人として、2ヶ国語もしくは3カ国語を使ってビジネスで活用しています。
このように、外国語が必須とされる社会では、もはや母語への影響云々といった反対意見は聞かれません。
ですが、彼らがバイリンガルもしくはトライリンガルになれたのは、やはりこういった英語や北京語を小さなころから習い、使用する機会があったからでしょう。
香港人にはバイリンガル・トライリンガルが多いですが、決して「自然と」「いつのまに」話せるようになったわけではなく、それなりの努力と時間と根気が必要なのですね。
4.まとめ
バイリンガル教育について言えることは、言語を学ぶことは1年や2年で完了するものではなく、長期間に渡って学び続けるものだということです。
「読む」「書く」の能力は一人でも学べないことはありませんが、たとえば週に1時間程度、英語学校に通うだけでは不十分です。もっとアカデミックに、英語で本を読んだり、書いたりする必要があるでしょう。
また、「話す」「聞く」の能力においては、対人関係のコミュニケーションに深くかかわってくる必要があるため、学んだら、それを使用する、という環境づくりが重要になってきます。